ビルドアップ(build-up)
高エネルギーX線で、表面ではなく少し中に入った深さで線量が最大になる現象。なぜそうなるのか、エネルギーとdmaxの関係、スキンスペアリングの意味まで。
一言でいうと
ビルドアップとは、高エネルギーX線を当てたとき、いちばん線量が高くなるのが体の表面ではなく、少し中に入った深さになる現象です。
なぜ表面が最大にならないのか
X線(光子)そのものは、体に入った瞬間がいちばん多く、進むほど減っていきます。それなのに線量が奥で最大になるのは、線量を置いていくのが光子ではなく、光子がはじき出した電子だからです。
流れはこうです。
- 高エネルギーの光子が組織の原子に当たり、電子をはじき出す
- はじき出された電子は、前方(進行方向)へ勢いよく飛んでいく
- その電子が進みながらエネルギーを置いていく = ここが線量になる
つまり表面付近では、まだ電子の数が増えている途中です。深くなるにつれて電子が積み重なり(build up)、ある深さで「増える分」と「減る分」がつり合って最大になります。この最大点を dmax と呼びます。
dmaxを過ぎると、光子自体が減っている影響のほうが勝つので、あとは深くなるほど線量が下がっていきます。
エネルギーとdmaxの関係
電子が飛ぶ距離はエネルギーが高いほど長くなるので、エネルギーが高いほどdmaxは深くなります。
| 線質 | dmaxのおよその深さ |
|---|---|
| コバルト60(約1.25 MV相当) | 約0.5 cm |
| 4 MV X線 | 約1.0 cm |
| 6 MV X線 | 約1.5 cm |
| 10 MV X線 | 約2.5 cm |
スキンスペアリング効果
表面の線量が低く抑えられることをスキンスペアリング効果(皮膚温存効果)と呼びます。
昔の低エネルギーX線では、体の奥の腫瘍に線量を届ける前に皮膚がやけどしてしまうことが問題でした。高エネルギーX線ではビルドアップのおかげで皮膚の線量が下がるため、深い腫瘍を治療できるようになりました。
ボーラスを置くとどうなるか
皮膚のすぐ下に腫瘍がある場合は、逆に皮膚にもしっかり線量を入れたいことがあります。
そこで体表に、組織と似た性質のシート(ボーラス)を貼ります。するとビルドアップがボーラスの中で完了するので、皮膚の位置がちょうどdmaxになり、皮膚線量が上がります。
「ボーラス=被ばくを減らすもの」と誤解しやすいところですが、実際は皮膚線量を意図的に上げるために使います。
国試ではこう出る
- ビルドアップが起きる理由は二次電子の飛程。光子がはじき出した電子が前方に進んでから線量を置いていくため、表面より少し奥で最大になる。光子そのものは深くなるほど減っていく。
- エネルギーが高いほどdmax(最大点)は深くなる。6 MVで約1.5 cm、10 MVで約2.5 cm。コバルト60は約0.5 cm。数値を選ばせる問題が出る。
- 表面線量が低く抑えられることをスキンスペアリング効果という。高エネルギーX線の大きな利点。
- 体表にボーラスを置くとビルドアップが体表で完了し、皮膚線量が上がる。皮膚に線量を入れたいときに意図的に使う。「ボーラス=被ばく低減」ではない。
くわしく学ぶ
- 線量分布とPDD(深部量百分率)・ビルドアップ 放射線治療では、体内で線量が深さとともにどう変化するかが重要です。深さごとの線量を表すPDD(深部量百分率)と、高エネルギーX線で表面線量が低くなるビルドアップ(スキンスペアリング)を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
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- 光子と物質の相互作用(光電効果・コンプトン散乱・電子対生成) 光電効果・コンプトン散乱・電子対生成・光核反応の違い、どのエネルギーと原子番号でどれが優勢になるか、特性X線とオージェ電子が競合する理由、制動X線との違い、減弱係数と半価層の関係まで。国家試験で毎回問われる光子と物質の相互作用を、図で整理します。