DLP(Dose Length Product:線量長さ積)
CTDIvolに撮影範囲の長さを掛けた、検査1件ぶんの線量。CTDIvolとの役割の違い、実効線量への換算のしかたと、その換算がどこまで信用できるかまで。
一言でいうと
DLP(Dose Length Product)は、その検査1件で、装置がトータルどれだけの線量を出したかを表す指標です。
CTDIvolとの違い
2つの関係は、次のように整理すると分かりやすくなります。
DLP = CTDIvol × 撮影範囲の長さ(cm)
| 指標 | 単位 | 何を表すか |
|---|---|---|
| CTDIvol | mGy | 1回転あたりの線量の濃さ |
| DLP | mGy·cm | 検査全体の線量の総量 |
たとえるなら、CTDIvolが「絵の具の濃さ」、DLPが「塗った面積まで含めた絵の具の総量」です。
同じ濃さ(CTDIvol)でも、広い範囲を撮ればDLPは大きくなります。
具体例
CTDIvol 10 mGy で 30 cm の範囲を撮影した場合、
DLP = 10 mGy × 30 cm = 300 mGy·cm
同じ条件で範囲を60 cmに広げれば、DLPは600 mGy·cmと2倍になります。
撮影範囲を絞ることが、そのまま被ばく低減になるという関係がここから分かります。必要のない範囲まで撮らない、というのは実務でいちばん効く対策のひとつです。
実効線量への換算
DLPに部位ごとの係数を掛けると、実効線量(mSv)のおおよその値が求められます。
実効線量(mSv)≒ DLP(mGy·cm)× k
| 部位 | 換算係数 k(mSv/mGy·cm)の目安 |
|---|---|
| 頭部 | 約 0.0021 |
| 頸部 | 約 0.0059 |
| 胸部 | 約 0.014 |
| 腹部・骨盤 | 約 0.015 |
頭部の係数が飛び抜けて小さいのが特徴です。頭部には放射線感受性の高い臓器(骨髄・生殖腺・肺・乳房など)が少ないためです。
先ほどの例(腹部でDLP 300 mGy·cm)なら、
300 × 0.015 = 約4.5 mSv
となります。
換算はどこまで信用できるか
この換算は便利ですが、あくまで標準的な体格の集団に対する目安です。
- DLPはファントムを基準にした値なので、患者の体格が反映されていない
- 実効線量は、もともと防護の最適化のために作られた集団向けの量
- 特定の個人が受けたリスクの評価には使えない
「この患者さんは4.5 mSv被ばくしました」という言い方は、厳密には正しくありません。この点は国際的にも繰り返し注意されています。
体格を加味した指標としては SSDE(Size-Specific Dose Estimate) があります。
DRLとの関係
自施設の線量が高すぎないかを点検する目安が DRL(診断参考レベル) です。日本では部位・条件ごとにCTDIvolとDLPの両方で値が示されています。
自施設の値がDRLを大きく超えていたら、撮影条件を見直します。逆に極端に低い場合も、画質が診断に足りているかを確認する必要があります。
DRLは超えてはいけない上限ではなく、見直しのきっかけにする目安です。ここは設問で狙われます。
国試ではこう出る
- DLP = CTDIvol × 撮影範囲の長さ(cm)。単位はmGy·cm。CTDIvol(mGy)は「濃さ」、DLPは「総量」と整理する。
- 実効線量(mSv)≒ DLP × 換算係数k。kは部位ごとに違い、頭部が小さく体幹部が大きい(頭部 約0.0021、胸部 約0.014、腹部・骨盤 約0.015 mSv/mGy·cm)。
- 撮影範囲が2倍になればDLPも2倍。範囲を絞ることが被ばく低減に直結する。
- DLPもファントム基準の値なので、患者の体格は反映されない。換算した実効線量はあくまで集団の目安であり、個人の被ばく評価には使えない。
くわしく学ぶ
- CTの被ばく指標(CTDIとDLP) CTの線量を表す代表的な指標が、CTDI(CTDIvol)とDLPです。CTDIvolが1断面あたりの線量、DLPがそれにスキャン長をかけた総量の目安であること、実効線量との関係を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- CTの被ばく低減技術(AEC・逐次近似・低管電圧) CTは画質を保ちながら線量を下げる工夫が大切です。体の厚みに合わせて管電流を変えるAEC、ノイズを抑える逐次近似や深層学習再構成(DLR)、造影で有利な低管電圧など、代表的な被ばく低減技術を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- 線量の単位と測定(吸収線量・カーマ・照射線量・電離箱) 照射線量・カーマ・吸収線量・等価線量・実効線量の違いと使える放射線の種類、W値と空気カーマの換算、ブラッグ・グレイの空洞理論が阻止能比になる理由、電離箱の温度気圧補正が1より大きくなる場合、イオン再結合まで。国家試験で最も出題が多い分野を整理します。