DLR(Deep Learning Reconstruction:深層学習再構成)
AIでノイズを抑えながら画像を作る再構成法。FBP・逐次近似(IR)との違い、逐次近似の「ぬめり」を解決した理由、そして使うときの注意点まで。
一言でいうと
DLR(Deep Learning Reconstruction)は、あらかじめ学習させたAIを使って、ノイズを抑えたCT画像を作る方法です。
低い線量で撮ったデータから、高い線量で撮ったような画像を再現することを狙っています。
再構成法の3世代
DLRの位置づけを理解するには、その前の2つを知っておくと早いです。
① FBP(フィルタ補正逆投影法)
長く標準だった方法です。数式で一発で計算するためとても速いのが利点。
ただし、線量を下げるとノイズがそのまま増えます。ノイズを減らす手立てがほとんどありません。
② 逐次近似再構成(IR)
「仮の画像を作る → その画像から得られるはずの投影データを計算する → 実際のデータと比べる → 修正する」をくり返す方法です。
ノイズを大きく減らせるため、被ばくを下げられるようになりました。ただし2つの弱点がありました。
- 計算に時間がかかる(くり返し処理のため)
- 画像の質感が不自然になる。ノイズを強く減らすほど、のっぺりした「ぬめり」のある見た目になり、低コントラストの病変が見えにくくなる
③ DLR(深層学習再構成)
大量の「低線量画像」と「高線量画像」のペアをAIに学習させ、低線量の入力から高線量相当の出力を推定させます。
学習は事前に済ませてあるので、実際の再構成は一度通すだけで終わり、速い。しかも、自然な質感を保ったままノイズを減らせます。
| FBP | 逐次近似(IR) | DLR | |
|---|---|---|---|
| ノイズ低減 | 弱い | 強い | 強い |
| 計算時間 | 速い | 遅い | 速い |
| 質感 | 自然 | 不自然になりがち | 自然 |
| 低コントラスト分解能 | 線量次第 | 落ちやすい | 保たれやすい |
何が嬉しいのか
同じ画質ならより低い線量で済み、同じ線量ならより良い画質が得られます。小児CTや、くり返し検査が必要な患者さんで特に意味が大きい技術です。
使うときの注意
DLRは「学習したことを再現する」しくみです。そのため次の点に注意が必要です。
- 学習データに含まれていない、まれな所見では、想定外のふるまいをしうる
- 実際には存在しない構造をもっともらしく描いてしまう可能性(ハルシネーション)が指摘されている
- 撮影条件が学習時と大きく違うと、性能が落ちる
「AIが作った画像だから正しい」とは限りません。診断上迷う場面では、元の再構成画像も併せて確認するという運用がとられます。
補足
同じ「深層学習」でも、再構成の段階で使うDLRと、できあがった画像にノイズ除去をかける後処理は別物です。
DLRは投影データや再構成の過程に組み込まれており、後処理よりも情報の損失が少ないとされています。
国試ではこう出る
- 再構成法の世代はFBP → 逐次近似(IR)→ DLR。DLRは逐次近似の弱点だった不自然な質感(ぬめり)と長い計算時間を改善したもの。
- DLRは低線量データから高線量相当の画像を推定するように学習させてある。低線量CTでの画質改善が主な狙い。
- 逐次近似はノイズを減らすほどテクスチャが不自然になり、低コントラスト分解能が落ちるという弱点があった。
- 注意点は学習データにない所見で予期しない挙動をしうること。存在しない構造を作る(ハルシネーション)可能性が指摘されている。
くわしく学ぶ
- CTの画像再構成(フィルタ補正逆投影・逐次近似) CTは多方向からの投影データを集め、計算で断層像を作ります。フィルタ補正逆投影(FBP)と逐次近似再構成(IR)の違い、近年の深層学習再構成(DLR)、再構成関数(カーネル)の役割を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- CTの被ばく低減技術(AEC・逐次近似・低管電圧) CTは画質を保ちながら線量を下げる工夫が大切です。体の厚みに合わせて管電流を変えるAEC、ノイズを抑える逐次近似や深層学習再構成(DLR)、造影で有利な低管電圧など、代表的な被ばく低減技術を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- CTの画質(ノイズ・空間分解能・コントラスト分解能) CTの画質は、ノイズ・空間分解能・コントラスト分解能で語られます。ノイズが線量(mAs)の平方根に反比例する関係や、空間分解能とコントラスト分解能のトレードオフを、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。