DSA(Digital Subtraction Angiography:デジタルサブトラクション血管造影)
造影前後を引き算して血管だけを浮かび上がらせる技術。マスク像とライブ像の関係、いちばん多い失敗(モーションアーチファクト)とその対処まで。
一言でいうと
DSA(Digital Subtraction Angiography)は、造影剤を入れる前と後の画像を引き算して、血管だけを残す技術です。
骨や腸管ガスといった「じゃまなもの」が消えるので、細い血管まではっきり見えるようになります。
しくみ
手順はとてもシンプルです。
- 造影剤を入れる前に1枚撮る → マスク像
- 造影剤を入れて撮り続ける → ライブ像
- コンピュータが ライブ像 − マスク像 を計算する
引き算をすると、両方に写っている骨や軟部組織は差がゼロになって消えます。残るのは造影剤が入った部分=血管だけです。
順番を取り違えないでください。マスク像は必ず造影剤が入る前です。
利点
- 骨や腸管ガスが消え、細い血管まで見える
- 背景が消えるぶん、少ない造影剤でも描出できる
- 動画として撮るので、血流の流れる様子(時間経過)が分かる
最大の弱点 — 体が動くと失敗する
DSAは「同じ場所を2回撮って引き算する」という前提で成り立っています。
そのため、マスク像を撮ってからライブ像を撮るまでの間に体が少しでも動くと、引き算しきれません。骨の輪郭が白黒の二重線として残ってしまいます。これがモーションアーチファクトです。
原因になるのは、
- 呼吸(腹部でとくに問題)
- 腸管の蠕動やガスの移動
- 嚥下(頸部)
- 痛みや不快感による体動
対処法
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| ピクセルシフト | マスク像を上下左右にずらして重なりを合わせ直す |
| リマスク | ずれる前の別のフレームをマスクとして選び直す |
| 再撮影 | ずれが大きく補正できない場合 |
| 息止めの指示 | 撮影前の説明でかなり防げる |
| 鎮痙薬 | 腸管の動きを抑える |
ピクセルシフトは平行移動の補正なので、回転やねじれのずれには効きません。そこが限界です。
被ばくについて
背景が消えるぶん造影剤は減らせますが、画像を2回(マスクとライブ)撮るので、透視だけの場合より被ばくは増えます。
「造影剤が減る=被ばくも減る」ではないので注意してください。必要な範囲・フレームレートに絞ることが大切です。
ロードマップとの関係
DSAで作った血管像を、そのあとの透視画像に重ねて表示する機能がロードマップです。
血管の地図が透視に重なるので、カテーテルやガイドワイヤーをどこへ進めればよいかが一目で分かります。造影剤を追加せずに操作できるため、造影剤量と被ばくの両方を減らせます。
国試ではこう出る
- 計算はライブ像 − マスク像。マスク像は造影剤が入る前に撮る。順番を逆にする選択肢に注意。
- 最大の弱点はモーションアーチファクト。マスクとライブの間に体が動くと、引き算しきれず輪郭が二重に残る。対処はピクセルシフト(画像をずらして合わせ直す)か再撮影。
- 腹部では呼吸停止と腸管ガスの移動が大きな失敗要因。息止めができない患者では画質が落ちる。
- 少ない造影剤・細い血管でも描出できる一方、2回撮るので被ばくは増える。ロードマップは、このDSA像を透視に重ねてカテーテル操作を助ける機能。
くわしく学ぶ
- DSA(デジタルサブトラクション血管造影)の原理 DSAは、造影前の『マスク像』を造影後の『ライブ像』から差し引いて、血管だけを浮かび上がらせる技術です。サブトラクションのしくみと、体動によるミスレジストレーション(ずれ)への対策を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- ロードマップと3D-DSA(回転DSA) ロードマップは造影した血管像を透視に重ねてカテーテルを誘導する機能、3D-DSAはCアームを回転させて多方向から撮影し血管を立体的に再構成する技術です。それぞれのしくみと利点を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- 血管撮影装置の構成(Cアーム・FPD・天板) 血管撮影装置は、X線管と検出器を向かい合わせに保持するCアームが特徴です。Cアーム・FPD・天板・インジェクタといった構成と、多方向から撮影できる回転のしくみを、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。