DWI(Diffusion Weighted Imaging:拡散強調画像)
水分子の動きにくさを画像にするMRI。急性期脳梗塞が光る理由、b値の意味、そして「高信号=拡散制限」とは限らないT2シャインスルーの見分け方まで。
一言でいうと
DWI(Diffusion Weighted Imaging)は、水分子がどれくらい自由に動き回れるかを画像にしたMRIです。
急性期の脳梗塞を発症直後から捉えられるため、救急の現場でなくてはならない撮像法になっています。
しくみ
体内の水分子は、じっとしているのではなく、ランダムに動き回っています(ブラウン運動)。これが拡散です。
DWIでは、強い傾斜磁場を前後2回かけます。
- 1回目の傾斜磁場で、位置に応じて位相をずらす
- 少し待つ
- 2回目の傾斜磁場で、逆向きに位相を戻す
このとき、
- 動かなかった水分子 … 位相がぴったり元に戻る → 信号が残る(明るい)
- 動き回った水分子 … 場所が変わっているので戻りきらない → 信号が失われる(暗い)
つまり動けない水ほど明るく写る、という関係になります。
なぜ急性期脳梗塞が光るのか
脳梗塞が起きると、細胞のポンプ(Na⁺/K⁺-ATPase)を動かすエネルギーが尽きます。すると細胞内に水が入り込み、細胞が膨らみます(細胞性浮腫)。
細胞の外の狭かったすき間がさらに狭くなり、水分子が動き回れなくなります。拡散が制限されるわけです。
その結果、発症から数分〜数十分という早い段階でDWIが高信号になります。CTでは早期の梗塞はほとんど分かりませんし、T2強調像でも数時間はかかります。この速さがDWIの価値です。
b値
b値は、どれくらい強く拡散の重みをかけるかを表す数字です(単位 s/mm²)。傾斜磁場の強さと時間で決まります。
| b値 | 画像の性質 |
|---|---|
| b = 0 | 拡散の重みなし。ほぼT2強調像 |
| b = 1000 | 頭部の標準。拡散制限がはっきり出る |
| 高いb値 | 拡散の重みは強いが、信号が下がりノイズが増える |
b値を上げれば感度は上がりますが、SNRとのバランスで頭打ちになります。
いちばんのひっかけ — T2シャインスルー
DWIが高信号だからといって、拡散制限があるとは限りません。
DWIはもともとT2強調のベースに拡散の重みを乗せた画像です。そのため、もともとT2が長い(T2強調像で明るい)組織は、拡散が正常でも明るく写ってしまいます。これをT2シャインスルー(透けて見える)と呼びます。
慢性期の脳梗塞や、浮腫、嚢胞などで起こります。
見分け方
ADC(見かけの拡散係数)マップを併せて見ます。ADCは拡散のしやすさそのものを数値化した画像で、T2の影響を受けません。
| DWI | ADC | 判定 |
|---|---|---|
| 高信号 | 低信号 | 本物の拡散制限(急性期梗塞など) |
| 高信号 | 高信号 or 等信号 | T2シャインスルー(拡散は正常) |
DWIとADCは必ずセットで見る。これが実務でも国試でも鉄則です。
弱点
DWIは体動に極端に弱いため、一瞬で撮り切れる EPI(エコープラナー法) で撮像します。その代償として、
- 磁化率アーチファクト(空気と骨の境界で信号が飛ぶ)
- 画像の歪み
が出やすくなります。頭蓋底、副鼻腔や乳突蜂巣のそば、金属の近くではとくに目立ちます。
頭部以外での応用
拡散制限は「細胞がぎっしり詰まっている」状態でも起こります。そのため、
- 膿瘍(膿は粘りけがあり水が動きにくい)
- 悪性リンパ腫など細胞密度の高い腫瘍
- 全身のがん検索(DWIBS)
にも使われます。膿瘍と壊死した腫瘍の区別は、DWIが得意とする典型的な場面です。
国試ではこう出る
- 高信号 = 拡散が制限されている(水が動きにくい)。急性期脳梗塞・膿瘍・細胞密度の高い腫瘍で見られる。
- DWI高信号だけでは拡散制限とは言えない。もともとT2が長い組織も明るく写る(T2シャインスルー)。ADCマップで低信号なら本物の拡散制限。
- b値を上げるほど拡散の重みが強くなるが、信号は下がりSNRは悪化する。頭部ではb=1000 s/mm²が標準。b=0はほぼT2強調像になる。
- 撮像にはEPIが使われるため高速だが、磁化率アーチファクトと歪みが出やすい。頭蓋底や副鼻腔の近くでとくに目立つ。
くわしく学ぶ
- 拡散強調画像(DWI)とb値の基礎 MRIの拡散強調画像(DWI)で必ず出てくる「b値」。何を表すパラメータなのか、b値を上げると画像はどう変わるのか、ADCやT2 shine-throughとの関係までを、受験者・現場の両方に向けて整理します。
- EPI(エコープラナー法)の基礎と長所・短所 EPIは1回の励起でk空間を一気に埋める超高速撮像法で、拡散強調(DWI)やBOLD(fMRI)の土台になっています。その仕組みと、磁化率や歪みに弱いという弱点を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- T1・T2・プロトン密度の違いと使い分け MRIの基本コントラストである T1強調・T2強調・プロトン密度(PD)強調。それぞれが「何の差」を見ているのか、縦緩和・横緩和の意味からTR・TEの設定までを、受験者・現場の両方に向けて図と式で整理します。