本文へスキップ
← 用語集

DWI(Diffusion Weighted Imaging:拡散強調画像)

水分子の動きにくさを画像にするMRI。急性期脳梗塞が光る理由、b値の意味、そして「高信号=拡散制限」とは限らないT2シャインスルーの見分け方まで。

一言でいうと

DWI(Diffusion Weighted Imaging)は、水分子がどれくらい自由に動き回れるかを画像にしたMRIです。

急性期の脳梗塞を発症直後から捉えられるため、救急の現場でなくてはならない撮像法になっています。

しくみ

体内の水分子は、じっとしているのではなく、ランダムに動き回っています(ブラウン運動)。これが拡散です。

DWIでは、強い傾斜磁場を前後2回かけます

  1. 1回目の傾斜磁場で、位置に応じて位相をずらす
  2. 少し待つ
  3. 2回目の傾斜磁場で、逆向きに位相を戻す

このとき、

  • 動かなかった水分子 … 位相がぴったり元に戻る → 信号が残る(明るい)
  • 動き回った水分子 … 場所が変わっているので戻りきらない → 信号が失われる(暗い)

つまり動けない水ほど明るく写る、という関係になります。

なぜ急性期脳梗塞が光るのか

脳梗塞が起きると、細胞のポンプ(Na⁺/K⁺-ATPase)を動かすエネルギーが尽きます。すると細胞内に水が入り込み、細胞が膨らみます(細胞性浮腫)。

細胞の外の狭かったすき間がさらに狭くなり、水分子が動き回れなくなります。拡散が制限されるわけです。

その結果、発症から数分〜数十分という早い段階でDWIが高信号になります。CTでは早期の梗塞はほとんど分かりませんし、T2強調像でも数時間はかかります。この速さがDWIの価値です。

b値

b値は、どれくらい強く拡散の重みをかけるかを表す数字です(単位 s/mm²)。傾斜磁場の強さと時間で決まります。

b値画像の性質
b = 0拡散の重みなし。ほぼT2強調像
b = 1000頭部の標準。拡散制限がはっきり出る
高いb値拡散の重みは強いが、信号が下がりノイズが増える

b値を上げれば感度は上がりますが、SNRとのバランスで頭打ちになります。

いちばんのひっかけ — T2シャインスルー

DWIが高信号だからといって、拡散制限があるとは限りません。

DWIはもともとT2強調のベースに拡散の重みを乗せた画像です。そのため、もともとT2が長い(T2強調像で明るい)組織は、拡散が正常でも明るく写ってしまいます。これをT2シャインスルー(透けて見える)と呼びます。

慢性期の脳梗塞や、浮腫、嚢胞などで起こります。

見分け方

ADC(見かけの拡散係数)マップを併せて見ます。ADCは拡散のしやすさそのものを数値化した画像で、T2の影響を受けません。

DWIADC判定
高信号低信号本物の拡散制限(急性期梗塞など)
高信号高信号 or 等信号T2シャインスルー(拡散は正常)

DWIとADCは必ずセットで見る。これが実務でも国試でも鉄則です。

弱点

DWIは体動に極端に弱いため、一瞬で撮り切れる EPI(エコープラナー法) で撮像します。その代償として、

  • 磁化率アーチファクト(空気と骨の境界で信号が飛ぶ)
  • 画像の歪み

が出やすくなります。頭蓋底、副鼻腔や乳突蜂巣のそば、金属の近くではとくに目立ちます。

頭部以外での応用

拡散制限は「細胞がぎっしり詰まっている」状態でも起こります。そのため、

  • 膿瘍(膿は粘りけがあり水が動きにくい)
  • 悪性リンパ腫など細胞密度の高い腫瘍
  • 全身のがん検索(DWIBS)

にも使われます。膿瘍と壊死した腫瘍の区別は、DWIが得意とする典型的な場面です。

国試ではこう出る

  • 高信号 = 拡散が制限されている(水が動きにくい)。急性期脳梗塞・膿瘍・細胞密度の高い腫瘍で見られる。
  • DWI高信号だけでは拡散制限とは言えない。もともとT2が長い組織も明るく写る(T2シャインスルー)。ADCマップで低信号なら本物の拡散制限。
  • b値を上げるほど拡散の重みが強くなるが、信号は下がりSNRは悪化する。頭部ではb=1000 s/mm²が標準。b=0はほぼT2強調像になる。
  • 撮像にはEPIが使われるため高速だが、磁化率アーチファクトと歪みが出やすい。頭蓋底や副鼻腔の近くでとくに目立つ。

くわしく学ぶ