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ESD(Entrance Surface Dose:入射表面線量)

X線が入る皮膚表面での線量。後方散乱を含むという定義の意味、空気カーマとの違い、IVRで問題になるPSDとの使い分けまで。

一言でいうと

ESD(Entrance Surface Dose)は、X線が体に入っていく側の皮膚表面が受ける線量です。一般撮影の患者被ばくを見積もるときの、基本の指標になります。

単位はmGy(ミリグレイ)です。

「後方散乱を含む」という定義

ESDの定義でいちばん大事なのがここです。

皮膚が受ける線量は、装置から飛んできたX線だけではありません。体の中に入ったX線の一部が跳ね返って皮膚側に戻ってくるぶんも加わります。これが後方散乱です。

ESD = 入射空気カーマ × 後方散乱係数

後方散乱係数はおよそ 1.2〜1.4 です。つまり、体があるだけで皮膚線量は2〜4割増しになります。

後方散乱
入射空気カーマ含まない(空気中で測る)
ESD含む(体があるときの皮膚の値)

「同じ条件でもESDのほうが大きい」という関係は、そのまま設問になります。

何で決まるか

ESDは次の条件で変わります。

  • 管電圧(kV) … 高いほど1個あたりのエネルギーが大きい
  • 管電流時間積(mAs) … 比例して増える
  • 距離 … 線源から遠いほど減る(逆二乗則)
  • 付加フィルタ … 低エネルギー成分を除くと減る
  • 照射野 … 広いほど散乱が増え、係数がやや大きくなる

被ばくを減らす基本は、必要な画質を保てる範囲で管電圧を上げ、mAsを下げること、そして照射野を絞ることです。

PSDとの使い分け

一般撮影は一瞬で終わり、当たる場所も1か所なのでESDで十分です。

ところが心臓カテーテル検査やIVRでは、

  • 透視を長時間続ける
  • 角度を変えながら何度も照射する

という状況になります。この場合、皮膚のどの一点にいちばん線量が積み上がったかが問題になります。それを表すのが PSD(Peak Skin Dose:最大皮膚線量)です。

ESDPSD
場面一般撮影透視・IVR
意味入射面の皮膚線量皮膚上で最も高い一点の線量

なぜ皮膚線量を管理するのか

放射線の影響は2種類に分かれます。

  • 確率的影響(発がんなど)… しきい値がなく、線量に応じて確率が上がる。全身の指標である実効線量(mSv)で管理
  • 確定的影響(皮膚の紅斑・脱毛・潰瘍、白内障)… しきい値があり、超えると必ず起こる。局所の皮膚線量(mGy)で管理

ESDやPSDが対象にしているのは確定的影響のほうです。「被ばく管理=実効線量」と思い込んでいると、この区別で失点します。

IVRでは、あらかじめ決めた線量に達したら術者に知らせる、当たる角度を分散させる、といった運用が行われます。

国試ではこう出る

  • ESDは後方散乱を含む。体に入ったX線が跳ね返ってくるぶんが上乗せされるため、同じ条件の空気中の値より大きくなる(後方散乱係数はおよそ1.2〜1.4)。
  • 空気カーマ(入射空気カーマ)は後方散乱を含まない。ESDとの違いはここ。
  • ESDは1回の撮影で入射面の皮膚が受けた線量。透視やIVRのように長時間・多方向で照射する場合は、最も線量が集中した点を表すPSD(最大皮膚線量)を使う。
  • 確定的影響(皮膚の紅斑・脱毛・潰瘍)にはしきい値がある。管理の対象になるのは実効線量ではなく皮膚線量。

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