FOV(Field Of View:撮像視野)
画像に写し込む範囲の大きさ。FOVを狭めると何が良くなり何が犠牲になるか、折り返し(エイリアシング)が起こる理由と対策まで。
一言でいうと
FOV(Field Of View)は、1枚の画像に写し込む範囲の大きさです。カメラでいう「画角」にあたります。
分解能との関係
画像は、決められた数のマス目(マトリクス)に分割されます。
画素サイズ = FOV ÷ マトリクス数
たとえばマトリクスが256×256のとき、
- FOV 256 mm → 画素は 1.0 mm
- FOV 128 mm → 画素は 0.5 mm
FOVを狭めれば画素は細かくなり、空間分解能は上がります。
ただしSNRが下がる
いいことばかりではありません。画素が小さくなると、その1マスが受け持つ組織の量が減ります。
信号は組織の量に比例するので、画素を半分の大きさにすれば、そこから出る信号も減ります。つまりSNRが下がって、画像がざらつきます。
- FOVを狭める → 分解能↑、SNR↓
- FOVを広げる → 分解能↓、SNR↑
「細かく見たい」と「きれいに見たい」はトレードオフの関係にあります。SNRを取り戻すには、加算回数(NEX)を増やす、スライスを厚くするなどの代償が必要です。
折り返し(エイリアシング)
FOVを狭めすぎて、体がFOVの外にはみ出すとどうなるでしょうか。
MRIでは、はみ出した部分が消えるのではなく、反対側の端に折り返して写り込みます。これを折り返し(エイリアシング、ラップアラウンド)といいます。
腹部の撮像で、両脇の脂肪が画像の反対側に重なって写るのが典型例です。
なぜ起こるか
MRIは位置を「信号の位相」で区別しています。位相は360°で一周してしまうため、FOVの外にある組織の位相が、FOV内のどこかと同じ値になってしまいます。装置はそれを区別できず、同じ場所として描いてしまいます。
なぜ位相エンコード方向に出るのか
周波数エンコード方向は、受信の段階でフィルタをかけて範囲外の信号を落とせます。いっぽう位相エンコード方向にはその手が使えないため、折り返しが残ります。
折り返しへの対策
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| FOVを広げる | いちばん確実。ただし分解能は下がる |
| 位相方向を変える | 体の薄い方向を位相エンコードにする(腹部なら前後方向) |
| オーバーサンプリング | 位相方向のデータを多めに取って折り返しを除く(No Phase Wrap/Foldover Suppression) |
| 飽和パルス | FOV外の組織の信号をあらかじめ消す |
オーバーサンプリングは画質を落とさず折り返しを防げますが、そのぶん撮像時間が延びます。
CTの場合
CTでもFOVは同じ意味ですが、MRIのような折り返しは起こりません。撮影範囲(スキャンFOV)より狭い表示FOVを設定して、関心領域を拡大表示するといった使い方をします。
国試ではこう出る
- 画素サイズ = FOV ÷ マトリクス数。FOVを半分にすれば画素は半分になり空間分解能は上がるが、1画素あたりの信号が減ってSNRは下がる。
- FOVより外に体がはみ出すと折り返し(エイリアシング/ラップアラウンド)が起こり、はみ出した部分が反対側に写り込む。
- 折り返しは位相エンコード方向に出る。周波数エンコード方向はフィルタで除去できるため問題になりにくい。
- 対策はFOVを広げる・位相方向を体の薄い向きに変える・オーバーサンプリング(No Phase Wrap)・飽和パルス。
くわしく学ぶ
- k空間の基礎 — MRIの画像はどう作られるか MRIの画像は「k空間」というデータ空間に信号を集め、逆フーリエ変換して作られます。k空間と画像の関係(フーリエ変換/逆フーリエ変換)、中心と周辺の役割、埋め方、分解能やFOVとの関係までを、受験者・現場の両方に向けて図で詳しく整理します。
- MRIの主なアーチファクト(折り返し・化学シフト・磁化率・モーション) MRIで現れる代表的なアーチファクトの原因と対策を整理します。折り返し(エイリアシング)・化学シフト・磁化率・モーションなど、どの方向に出るか、どう減らすかを、受験者・現場の両方に向けて図でまとめます。
- CTの画質(ノイズ・空間分解能・コントラスト分解能) CTの画質は、ノイズ・空間分解能・コントラスト分解能で語られます。ノイズが線量(mAs)の平方根に反比例する関係や、空間分解能とコントラスト分解能のトレードオフを、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。