グリッド(grid)
鉛の薄い箔で散乱線を止め、コントラストを上げる器具。グリッド比の意味、平行・集束・クロスの違い、そして上下逆に入れるとどこが白く抜けるかまで。
一言でいうと
グリッドは「すだれ」のようなもので、斜めに飛んでくる散乱線だけを鉛の壁でせき止め、まっすぐ来た一次線だけを通す器具です。散乱線が減るぶん、画像のコントラストが上がります。
しくみ
鉛の薄い箔と、X線を通しやすい中間物質(アルミ・カーボン・紙など)を、交互に細かく並べた板です。
被写体を通ってまっすぐ進んできたX線は、箔と箔のすき間をそのまま通り抜けます。いっぽう体内で向きを変えた散乱線は、斜めに進むため鉛箔にぶつかって止められます。
グリッド比 — いちばん問われる数字
グリッド比 = 鉛箔の高さ ÷ 箔と箔のすき間の幅
たとえば箔の高さが3 mm、すき間が0.25 mmなら、グリッド比は12:1です。
| グリッド比 | 散乱線を取る力 | 位置合わせ | 被ばく |
|---|---|---|---|
| 小さい(5:1など) | 弱い | ゆるい | 少ない |
| 大きい(12:1など) | 強い | シビア | 多い |
比を上げれば画質は良くなりますが、そのぶん線量を増やす必要があります。この増やす倍率をバッキー係数と呼びます。
グリッドの種類
箔の並べ方による分類
- 平行グリッド(parallel)… 箔がすべて垂直。構造は単純だが、周辺でX線が斜めに入るため端が抜けやすい
- 集束グリッド(focused)… 箔をX線管に向かって少しずつ傾けてある。実際の撮影で主流
- クロスグリッド(交差)… 縦と横に2枚重ねる。散乱線除去は最も強いが、斜入が一切できない
動かすかどうかによる分類
- 静止グリッド… そのまま置く。画像に細い縞(グリッド目)が写る
- 可動グリッド(ブッキー)… 撮影中に動かして縞をぼかす
可動グリッドが動く理由は、散乱線をたくさん取るためではなく、縞を見えなくするためです。ここはよく取り違えられます。
失敗するとどうなるか(グリッドカットオフ)
集束グリッドは、決められた距離・向きで使わないと一次線まで止めてしまい、画像が白く抜けます。
| 誤り | 画像の見え方 |
|---|---|
| 上下を逆に入れた | 周辺だけ白く抜け、中心は正常 |
| 収束距離から離れすぎ・近すぎ | 両端が対称に抜ける |
| 左右にずれて置いた | 画像全体が均等に薄くなる |
| 箔の向きと直角に斜入した | 全体が抜ける |
「周辺だけか、両端か、全体か」で原因を切り分けられます。この対応関係が国試で問われます。
国試ではこう出る
- グリッド比 = 鉛箔の高さ ÷ 箔と箔のすき間。箔の「厚さ」ではない。比が大きいほど散乱線をよく取るが、位置合わせがシビアになり被ばくも増える。
- 集束グリッドを上下逆に入れると、画像の周辺だけが白く抜ける(中心は正常)。収束距離から外れると両端が抜ける。抜け方の違いを問う問題が頻出。
- 可動グリッド(ブッキー)を動かす理由はグリッドの縞(グリッド目)を消すため。散乱線をより多く取るためではない。
- バッキー係数は「グリッドを使うために線量を何倍にするか」の値。グリッド比が大きいほど大きくなる。
- 使う目安は被写体厚10 cm以上、または管電圧60〜70 kV以上。小児の四肢など薄い部位では使わない。
くわしく学ぶ
- 散乱線とその対策(グリッド・絞り・空気間隙) 散乱線は画像のコントラストを下げ、被ばくの原因にもなります。グリッド(散乱線除去用格子)・照射野の絞り(コリメーション)・空気間隙法など、代表的な散乱線対策のしくみを、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- X線画像の濃度・コントラストと階調処理 X線画像の濃度(明るさ)とコントラスト(差)を、特性曲線(H-D曲線)で理解します。直線部の傾きがコントラストになること、デジタルでは階調処理(LUT)で後から調整できることを、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- 一般撮影の画質(鮮鋭度・粒状性・MTF・DQE) X線画像の画質は、鮮鋭度(シャープさ)・粒状性(ざらつき)・コントラストで決まります。ボケの原因や、MTF(鮮鋭度)・DQE(線量の使い方の効率)といった物理評価の指標を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。