MIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影法)
視線上でいちばん高い値だけを拾って重ねる表示法。血管が見やすい理由、奥行きが分からないという弱点、MinIPやスラブMIPとの使い分けまで。
一言でいうと
MIP(Maximum Intensity Projection)は、ある方向から見たとき、視線の上に並ぶ画素のうち「いちばん値が高いもの」だけを拾って1枚に描く表示法です。
しくみ
3Dのデータに向かって、たくさんの視線をまっすぐ通すところを想像してください。
1本の視線は、たくさんの画素を貫きます。MIPはその中から最大値を1つだけ選んで、その画素の値として採用します。これをすべての視線について行い、1枚の画像を作ります。
つまり「その方向で一番明るいものだけが生き残る」表示です。
なぜ血管が見やすいのか
造影された血管は、周囲の軟部組織よりCT値が高くなります。MRAでも、流れている血液の信号が周囲より高くなります。
血管がその視線上で最も高い値になるため、MIPをかけると背景が消えて血管だけが浮かび上がります。造影CTアンギオやMRAの標準的な表示法になっているのは、このためです。
最大の弱点 — 奥行きが分からない
MIPは「一番明るいものを1つ選ぶ」だけなので、それが手前にあるのか奥にあるのかという情報が捨てられます。
そのため、
- 交差する2本の血管の、どちらが手前か分からない
- 立体的な走行が把握しにくい
という問題が起こります。
対策として、角度を少しずつ変えたMIP画像を連続再生し、動きの見え方から前後関係を推測する方法(回転MIP)が使われます。
奥行きをきちんと表現したい場合は、すべてのボクセルを使う VR(ボリュームレンダリング) のほうが適しています。
高吸収構造にじゃまされる
MIPは最大値を拾うので、血管より高い値のものがあると、そちらが優先されてしまいます。
| じゃまになるもの | 起こること |
|---|---|
| 骨 | 血管が骨に隠れる |
| 石灰化 | 実際より太く見え、内腔が隠れる |
| 金属ステント | 内腔が見えなくなる |
特に石灰化した血管では、狭窄を実際より強く見積もってしまいます。狭窄の評価は、必ず元の断面像で内腔を確認してください。
骨がじゃまな場合は、あらかじめ骨を除去する処理(bone removal)を行います。
スラブMIP
全体を1枚にすると余計なものが入りすぎるため、厚みを限定して(たとえば10 mm分だけ)MIPをかける方法がよく使われます。これをスラブMIPと呼びます。
肺結節の検出では、薄いスライスを1枚ずつ追うより、スラブMIPにしたほうが小さな結節を見つけやすくなります。血管と結節は断面では似て見えますが、厚みを持たせると血管は線状につながり、結節は点として残るためです。
MinIP
逆に最小値を拾うのが MinIP(Minimum Intensity Projection)です。
空気のように値が低いものが強調されるので、気道の走行や、肺の低吸収域(気腫・モザイク)の描出に使われます。
国試ではこう出る
- MIPは視線上の最大値だけを拾う。そのため前後関係(奥行き)が分からないのが最大の弱点。手前の血管か奥の血管かを区別できない。
- MinIP(最小値投影法)は逆に最小値を拾う。空気を含む気道・肺の低吸収域の描出に使う。
- 厚みを限定したスラブMIPにすると、余計な高吸収構造が入らず読影しやすくなる。
- 石灰化やステントは高吸収なので、MIPでは実際より太く見えて内腔を隠す。狭窄の評価はMIPだけで行わない。
くわしく学ぶ
- CTの再構成表示(MPR・MIP・VR) ヘリカルCT・MDCTで集めた薄いスライス(ボリュームデータ)から、任意断面のMPR、最大値投影のMIP、立体表示のVRなどを作れます。それぞれの違いと使いどころを、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- MRアンギオ(TOF法・PC法)の基礎 造影剤を使わずに血管を描くMRアンギオ(MRA)。流入効果を使うTOF法と、流れによる位相差を使うPC法の原理・長所・短所を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- ロードマップと3D-DSA(回転DSA) ロードマップは造影した血管像を透視に重ねてカテーテルを誘導する機能、3D-DSAはCアームを回転させて多方向から撮影し血管を立体的に再構成する技術です。それぞれのしくみと利点を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。