PMT(Photomultiplier Tube:光電子増倍管)
わずかな光を100万倍に増幅する真空管。光電面とダイノードのはたらき、ガンマカメラで位置を決めるしくみ、半導体検出器に置き換わりつつある理由まで。
一言でいうと
PMT(Photomultiplier Tube)は、目に見えないほどかすかな光を、電気の信号として100万倍にまで増幅する真空管です。核医学の検出器の心臓部にあたります。
なぜ増幅が必要なのか
ガンマカメラでは、体から出たガンマ線がシンチレータ(NaI(Tl)結晶)に当たり、わずかな光(シンチレーション光)に変わります。
ただしこの光は、そのままでは弱すぎて画像になりません。そこでPMTの出番です。
3つのステップ
① 光電面 — 光を電子に変える
PMTの入口には光電面(フォトカソード)があります。ここに光が当たると、光電効果によって電子が飛び出します。これを光電子と呼びます。
ここで生まれる電子は、まだほんの数個です。
② ダイノード — 電子を雪だるま式に増やす
飛び出した電子は、電圧をかけたダイノードという電極に加速されてぶつかります。1個の電子がぶつかると、3〜5個の電子が跳ね返って出てきます(二次電子放出)。
これを10段ほどくり返すと、最初の1個が最終的に約100万個(10⁶)にまで増えます。
③ 陽極 — 電気信号として取り出す
増えきった電子を陽極で集め、電気信号として出力します。
順番をまとめると、光 → 電子 → 増幅 → 電気信号です。
ガンマカメラでの使われ方
ガンマカメラには、PMTが数十本(37〜90本程度)、六角形にすき間なく並んでいます。
シンチレータのある一点が光ると、その光は広がって複数のPMTに同時に届きます。光った場所に近いPMTほど強く、遠いPMTほど弱く反応します。
そこで各PMTの出力の比率から重心を計算して、「どこが光ったか」を決めます。これをアンガー型位置演算と呼びます。
つまり位置は1本のPMTで決まるのではなく、周りのPMTとのバランスで決まります。
同時に、すべてのPMTの出力を足し合わせた値が、そのガンマ線のエネルギーになります。この値を使って、散乱線を除くエネルギーウィンドウ(波高分析)をかけます。
弱点と、置き換わりつつある流れ
PMTは磁場の影響を強く受けます。電子が真空中を飛ぶ距離を利用しているため、磁場があると軌道が曲がってしまうからです。
そのためMRIと組み合わせるPET/MRIでは、PMTは使えません。代わりに磁場に強い半導体検出器(APD、SiPM)が使われます。近年はPET単体でもSiPMへの置き換えが進んでいます。
また、PMTは真空管なので大きく、高電圧を必要とする点も弱点です。
国試ではこう出る
- 順番は光 →(光電面で)電子 →(ダイノードで)増幅 → 電気信号。入口の光電面は光電効果を利用している。ここを「シンチレーション」と混同しない。
- 増幅の倍率はおよそ10⁶(100万倍)。増幅はダイノードで二次電子放出をくり返すことで起こる。
- ガンマカメラでは、複数のPMTが受け取った光の量の比から重心を計算して、光った位置を決める(アンガー型位置演算)。1本で位置が決まるわけではない。
- PMTは磁場に弱い。このためPET/MRIでは使えず、半導体検出器(APD・SiPM)に置き換えられている。
くわしく学ぶ
- ガンマカメラの構造(コリメータ・シンチレータ・PMT) ガンマカメラ(シンチレーションカメラ)は、体内から出るγ線を画像にする装置です。コリメータ・シンチレータ(NaI)・光電子増倍管(PMT)・位置演算という各部の役割としくみを、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- SPECTの原理(回転収集と断層再構成) SPECTは、ガンマカメラを体のまわりで回転させ、多方向から集めたデータを再構成して断層像を作る検査です。平面像との違いや、再構成(FBP・逐次近似)・減弱補正の考え方を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- PET/CT・SPECT/CTと減弱補正 PET/CTやSPECT/CTは、機能(代謝・血流)と形態(解剖)を1台で撮り、重ね合わせて見られる装置です。融合画像の意義と、CTデータを使った減弱補正のしくみを、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。