PTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠動脈形成術)
冠動脈の狭窄をバルーンで広げる治療。PCI・PTAとの言葉の使い分け、なぜステントが必要になったのか、技師が押さえる撮影方向まで。
一言でいうと
PTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)は、細くなった心臓の冠動脈に、先端に風船のついた細い管を入れて、内側から押し広げる治療です。
胸を開かずに、手首や足の付け根の血管から治すことができます。
名前の分解
長い英語ですが、分けると意味が見えてきます。
| 部分 | 意味 |
|---|---|
| Percutaneous | 経皮的(皮膚を刺して) |
| Transluminal | 経管腔的(血管の内側を通って) |
| Coronary | 冠動脈の |
| Angioplasty | 血管形成術 |
Cがcoronary(冠動脈)です。ここが抜けた PTA は、下肢動脈など全身の血管に対する同じ治療を指します。
PCIとの関係 — 頻出
PCI(Percutaneous Coronary Intervention:経皮的冠動脈インターベンション)は、冠動脈に対するカテーテル治療すべての総称です。
つまり、
- PCI(全体)
- PTCA(バルーンで広げる)
- ステント留置
- ロータブレータ(石灰化を削る)
- 血栓吸引 など
という入れ子の関係です。PTCAはPCIの一部であって、同じものではありません。
現在ではステント留置がほぼ標準になったため、実務では「PCI」と呼ぶことが多くなっています。
なぜステントが必要になったのか
バルーンで広げるだけの時代には、2つの大きな問題がありました。
① 急性冠閉塞
無理に広げると血管の内膜が裂け、その場で血管が詰まってしまうことがありました。
② 再狭窄
数か月のうちに、広げたところがまた細くなってしまいます。血管が元に戻ろうとする力(リコイル)と、傷を治そうとして内膜が厚くなることが原因です。
そこで、広げたあとに金属の網(ステント)を留置して支える方法が生まれました。これで急性閉塞は大きく減りました。
しかしステントの中で内膜が増殖する「ステント内再狭窄」は残ったため、再狭窄を抑える薬をしみ出させるDES(薬剤溶出性ステント)が開発され、現在の主流になっています。
技師が押さえること
撮影方向
冠動脈は立体的に走行しているため、1方向だけでは重なって見えません。RAO・LAO、CRA(頭側)・CAU(尾側)を組み合わせ、目的の枝が最もよく開く角度で撮ります。
被ばく管理
PCIは手技が長引くことがあり、皮膚に確定的影響(紅斑・脱毛・潰瘍)が出るおそれがあります。技師側では次の点を管理します。
- 透視時間・線量の把握と記録
- 同じ角度に集中させない(皮膚の同じ場所に線量が積み上がるのを避ける)
- 最大皮膚線量(PSD)の推定
- 患者を検出器に近づけ、線源からは離す
心臓カテーテル検査室での被ばくは、患者だけでなく術者にも及びます。防護板・防護具の適切な使用も重要です。
国試ではこう出る
- 言葉の関係はPTCA ⊂ PCI。PCIはバルーン・ステント・ロータブレータなどを含む冠動脈治療全体の総称。PTCAはそのうちバルーン拡張を指す。
- PTAは全身の血管、PTCAは冠動脈。Cがcoronary(冠動脈)の頭文字と覚える。
- バルーンだけでは急性冠閉塞と再狭窄が問題だった。これを解決するためにステントが、さらに再狭窄を減らすためにDES(薬剤溶出性ステント)が登場した。
- 手技が長引くと皮膚障害のリスクが出る。透視時間・角度の分散・最大皮膚線量(PSD)の把握が技師側の管理項目。
くわしく学ぶ
- 血管形成術・ステント(PTA・PTCA) 血管形成術(PTA)は、狭くなった血管をバルーンで広げる治療で、再び狭くならないようステントを留置することもあります。バルーン拡張からステント留置までの流れと、再狭窄・薬剤溶出性ステント(DES)を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- IVRで使うデバイス(カテーテル・ガイドワイヤ・シース) IVRの基本デバイスは、血管の出入り口となるシース、道筋を作るガイドワイヤ、薬や塞栓物質を流すカテーテルの3つです。それぞれの役割と、セルジンガー法による血管確保、サイズの考え方を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。
- IVRの被ばくと皮膚障害(基準線量・PSD) IVRは透視時間が長くなりやすく、患者の皮膚に高い線量が集中して確定的影響(皮膚障害)が起こりうる点が特徴です。しきい値のある皮膚障害、PSDや基準空気カーマ・面積線量といった指標を、受験者・現場の両方に向けて図で整理します。