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画像工学・医用工学

散乱線除去グリッド(評価量の式と使い分け)

散乱線除去グリッドは、国家試験で毎回のように出題されます。しかも評価量の式を聞く問題が多く、ここを曖昧にしていると毎回落とすことになります。

とくに グリッド比の分母は、毎回のように入れ替えられます。

グリッド比 = 箔の高さ ÷ 箔と箔の「すき間」

分母はすき間であって、箔の厚さではありません。これだけで何問か取れます。

散乱線そのものの基礎は「散乱線とその対策」にあります。この記事では、国家試験で問われる式と向きを中心に整理します。

グリッドの目的は、ただ1つ

散乱線除去グリッドのしくみ散乱線除去グリッドのしくみを示した図。焦点から出た一次線はまっすぐ進むのでグリッドのすき間を通り抜けて検出器に届く。被写体の中で生まれた散乱線は方向がばらばらで斜めに進むため、深いすき間を通り抜けられず鉛の箔に吸収される。グリッドの目的はただ1つで、散乱線を取り除いてコントラストを上げることである。散乱線は画像を白くかぶらせコントラストを下げるので、それを防ぐのがグリッドである。鮮鋭度には関係しない。グリッドは被写体より後ろにあるからである。骨のX線透過性にも無関係で、透過性は骨自身の性質で決まる。撮影条件が一定なら一次線も一部吸収されるので粒状性はむしろ低下する。グリッド:一次線は通し、散乱線は箔で止める目的はただ1つ。散乱線を取り除いてコントラストを上げること一次線はまっすぐ通り抜け、散乱線は斜めなので箔に当たる(グリッドの一部を拡大したところ)被写体(ここで散乱線が生まれる)検出器緑 = 一次線(まっすぐ)   赤 = 散乱線(斜め)グリッドの目的はただ1つ ── 散乱線を取り除いてコントラストを上げること散乱線は画像を白くかぶらせ、コントラストを下げる。それを防ぐのがグリッド鮮鋭度(ボケの少なさ)には関係しない。グリッドは被写体より後ろにあるから骨のX線透過性にも無関係。透過性は骨自身の性質で決まる撮影条件が一定なら、一次線も一部吸収されるので粒状性はむしろ低下する散乱線は方向がばらばらなので、深いすき間を通り抜けられず箔に吸収される
一次線はまっすぐなのですき間を通り抜け、散乱線は斜めなので箔に当たって吸収される。

散乱線は、画像を白くかぶらせてコントラストを下げる原因です。グリッドはこれを取り除きます。

グリッドの目的は、散乱線を取り除いてコントラストを上げること。それだけ

しくみは単純です。一次線は焦点からまっすぐ来るので、深いすき間をそのまま通り抜けます。一方、散乱線は被写体の中で生まれて方向がばらばらなので、斜めに入ってきて箔に当たり、吸収されます。

ここから、グリッドが関係しないこともはっきりします。

  • 鮮鋭度には関係しません。グリッドは被写体より後ろにあるので、ボケには影響しないからです
  • 骨のX線透過性にも無関係です。透過性は骨自身の性質で決まります

グリッドの種類

グリッドの種類散乱線除去グリッドの種類を示した図。平行グリッドは箔が互いに平行で入射面に垂直であり、使用距離の制限はない。集束グリッドは箔が焦点に向かって傾いており、延長線がある距離で1点に集まるため使用距離限界がある。クロスグリッドは2つの直線グリッドを角度をもたせて一体にしたもので除去能は高いが位置合わせが厳しい。静止グリッドはX線ビームに対して動かさずに使うのでグリッドの線が画像に写る。可動グリッドすなわちブッキーは撮影中に動かして線を消すので、グリッド線が目立たなくなる。使用距離の制限があるのは集束グリッドで、箔が焦点に向いているため決められた距離から外れるとカットオフが起こる。平行グリッドには距離の制限がないが周辺部の濃度は落ちる。テーパグリッドで箔の高さが中心に近づくほど減少するという記述は誤りである。グリッドの種類:距離の制限があるのは「集束」だけ平行は距離が自由。集束は決められた距離から外れるとカットオフ平行グリッド箔は互いに平行入射面に垂直。使用距離の制限はない距離限界なし集束グリッド焦点箔が焦点に向かって傾く延長線が、ある距離で1点に集まる距離限界ありクロスグリッド2つの直線グリッドを重ねる角度をもたせて一体に。除去能は高い位置合わせが厳しい静止グリッドX線ビームに対して動かさずに使うグリッドの線(縞)が画像に写る携帯撮影などで使う可動グリッド(ブッキー)撮影中に動かして線を消すグリッド線が目立たなくなる据え置きの撮影台で使う使用距離の制限があるのは 集束グリッド箔が焦点に向いているので、決められた距離から外れるとカットオフが起こる平行グリッドには距離の制限がない(ただし周辺部の濃度は落ちる)テーパグリッドで「箔の高さが中心に近づくほど減少する」は誤り。傾いているのであって高さではない
使用距離の制限があるのは集束グリッドだけ。平行グリッドは距離が自由。

箔の向きによる分類

  • 平行グリッド … 箔が互いに平行で、入射面に垂直。使用距離の制限はありません(ただし周辺部の濃度は落ちます)
  • 集束グリッド(テーパグリッド)… 箔が焦点に向かって傾いていて、延長線がある距離で1点に集まります。使用距離限界があり、決められた距離から外れるとカットオフが起こります
  • クロスグリッド … 2つの直線グリッドを角度をもたせて一体にしたもの。除去能は高いですが、位置合わせが厳しくなります

動かすかどうかによる分類

  • 静止グリッド … X線ビームに対して動かさずに使います。グリッドの線(縞)が画像に写ります。携帯撮影などで使います
  • 可動グリッド(ブッキー) … 撮影中に動かして線を消します。据え置きの撮影台で使います

評価量の式:分母が「すき間」か「箔の厚さ」か

グリッドの評価量グリッドの評価量と記号の位置を示した図。hは箔の高さ、Dは箔と箔のすき間、dは箔の厚さである。グリッド比はhをDで割ったもの、つまり箔の高さをすき間で割った値である。分母をdすなわち箔の厚さにするのは最大のひっかけで誤りである。比が大きいほど深いトンネルになり散乱線をよく除去できる。評価量は5つある。グリッド比はhをDで割る。グリッド密度は1をDとdの和で割ったもので、1センチメートルあたりの箔の本数である。選択度は一次線透過率Tpを散乱線透過率Tsで割る。露出係数すなわちバッキー係数は1を全放射線透過率Ttで割る。コントラスト改善比はグリッドありのコントラストをなしのコントラストで割る。密度は1センチメートルあたりの本数でミリメートルでも重さでもない。露出係数は全放射線透過率の逆数であり一次線だけの透過率ではない。グリッドの評価量:分母が「すき間」か「箔の厚さ」かグリッド比 = 高さ h ÷ すき間 D。ここが最大のひっかけ記号はどこを指すかh高さDすき間d箔の厚さ最大のひっかけグリッド比 = h ÷ D箔の高さ ÷ すき間✗ グリッド比 = h ÷ d分母を「箔の厚さ」にした誤り分母は すき間(D)。箔の厚さ(d)ではない高さが分子。逆にした選択肢も出る比が大きい = 深いトンネル = よく除去できるグリッド比h ÷ D箔の高さ ÷ すき間グリッド密度1 ÷ (D + d)1 cm あたりの箔の本数選択度Tp ÷ Ts一次線透過率 ÷ 散乱線透過率露出係数(バッキー係数)1 ÷ Tt全放射線透過率の逆数コントラスト改善比ありのC ÷ なしのCグリッドの有無でコントラストを比べる密度は「1 cm あたりの本数」。mm ではないし、重さでもない露出係数は 全放射線透過率 の逆数。一次線だけの透過率ではない選択度の Tp ÷ Ts と、コントラスト改善比は別の量
グリッド比 = h ÷ D(高さ ÷ すき間)。分母を箔の厚さ d にするのが最大のひっかけ。

記号の意味を先に固定します。

  • h … 箔の高さ
  • D … 箔と箔のすき間
  • d … 箔の厚さ

そのうえで、5つの評価量を整理します。

評価量式意味
グリッド比h÷Dh \div D箔の高さ ÷ すき間
グリッド密度1÷(D+d)1 \div (D + d)1 cm あたりの箔の本数
選択度Tp÷TsT_p \div T_s一次線透過率 ÷ 散乱線透過率
露出係数(バッキー係数)1÷Tt1 \div T_t全放射線透過率の逆数
コントラスト改善比ありの C ÷ なしの Cグリッドの有無でコントラストを比べる

出題で狙われるのは、次の3点です。

① グリッド比の分母

すき間 D です。箔の厚さ d ではありません。また、高さ h が分子です。「箔の高さに対するはくの間隔の比」と、逆にした選択肢も出ます。

グリッド比が大きい = 深いトンネルなので、散乱線をよく除去できます。

② グリッド密度の単位

1 cm あたりの本数(本/cm)です。「1 mm 当たり」も「はくの重さ」も誤りです。

③ 露出係数の分母

全放射線透過率 TtT_t の逆数です。一次線だけの透過率ではありません。グリッドを入れると全体の透過率が下がるので、その逆数だけ露出を増やす必要がある、という意味です。

使うとどうなるか、条件を変えるとどうなるか

グリッドを使うとどうなるかグリッドを使ったときの影響と、管電圧やグリッド比との関係を示した図。撮影条件を一定としたとき、コントラストは上がり、これがグリッドを使う目的である。粒状性は下がり、一次線も一部吸収されて量子ノイズが増えるためである。被ばく線量は増え、同じ濃度を得るのに露出を増やす必要があるためである。鮮鋭度は変わらず、グリッドは被写体より後ろにあるので無関係である。管電圧を上げると散乱線が増え、その方向も前方寄りになってグリッドをすり抜けやすくなるので、選択度もコントラスト改善比も小さくなる。グリッド比を大きくすると深いトンネルになり散乱線をよく除去できるが、一次線も余分に削られるので露出係数は大きくなり、位置合わせも厳しくなる。グリッドを使うと:上がるのはコントラストだけ粒状性は下がり、被ばくは増える。鮮鋭度は無関係グリッドを使うとどうなるかコントラスト↑ 上がるこれがグリッドを使う目的粒状性↓ 下がる一次線も一部吸収され、量子ノイズが増える被ばく線量↑ 増える同じ濃度を得るのに露出を増やす必要がある鮮鋭度− 変わらないグリッドは被写体より後ろにあるので無関係管電圧を上げると散乱線が増えるその方向も前方寄りになるグリッドをすり抜けやすくなる選択度もコントラスト改善比も 小さくなるグリッド比を大きくすると深いトンネルになる散乱線をよく除去できる一次線も余分に削られる露出係数は 大きくなる。位置合わせも厳しくなる「上がる/下がる」の向きを取り違えない上がるのは コントラスト だけ。粒状性は下がり、被ばくは増える管電圧が高いほど選択度は 小さく なる。「大きい」は誤りグリッド比が大きいほど露出係数は 大きく なる(より多くの線量が必要)
上がるのはコントラストだけ。粒状性は下がり、被ばくは増える。管電圧が高いほど選択度は小さくなる。

グリッドを使うと(撮影条件を一定として)

どうなるなぜ
コントラスト上がるこれがグリッドを使う目的
粒状性下がる一次線も一部吸収され、量子ノイズが増える
被ばく線量増える同じ濃度を得るのに露出を増やす必要がある
鮮鋭度変わらないグリッドは被写体より後ろにあるので無関係

上がるのはコントラストだけです。「粒状性が向上する」「被ばく線量が減少する」はどちらも誤りです。

管電圧を上げると

管電圧が高くなると、散乱線が増え、その方向も前方寄りになります。前方寄りの散乱線はグリッドをすり抜けやすいので、

選択度もコントラスト改善比も、小さくなる

「管電圧が高いほど選択度は大きい」は誤りです。向きが逆です。

グリッド比を大きくすると

深いトンネルになるので散乱線をよく除去できますが、一次線も余分に削られます。その分だけ露出を増やす必要があるので、

グリッド露出係数(バッキー係数)は大きくなる

同時に、位置合わせもシビアになります。

仮想グリッド

仮想グリッド物理グリッドと仮想グリッドを比べた図。物理グリッドは鉛の箔で実際に散乱線を止めるもので、確実に除去できるが、同じ画像を得るのに線量を2倍から4倍に増やす必要があり、位置合わせも要る。斜入すると濃度ムラすなわちカットオフが起こる。仮想グリッドは画像処理で散乱線成分を推定して引くもので、撮影後の画像に対して処理するので線量は変わらない。設定グリッド比を上げるほどより強く散乱線を除去する。そもそもグリッドを置かないのでカットオフが起きない。出力画像は原画像から推定した散乱線画像を引いたもので、加算ではなく減算である。散乱線成分を引くからこそ一次線成分の割合が上がってコントラストが戻る。仮想グリッドの最大の利点は線量が増えないことで、ポータブル撮影などグリッドを正しく置きにくい場面で使われる。仮想グリッド:線量を増やさずに散乱線を引く処理は撮影後。だから入射線量は一切変わらない物理グリッド鉛の箔で、実際に散乱線を止める確実に除去できる装置として物理的に遮る線量を増やす必要がある同じ画像を得るのに 2〜4 倍位置合わせが要る斜入すると濃度ムラ(カットオフ)仮想グリッド画像処理で散乱線成分を推定して引く線量は変わらない撮影後の画像に対して処理する設定グリッド比を上げるほどより強く散乱線を除去するカットオフが起きないそもそもグリッドを置かない出力画像 = 原画像 − 推定した散乱線画像(加算ではなく 減算)散乱線成分を引くからこそ、一次線成分の割合が上がってコントラストが戻る仮想グリッドの最大の利点は「線量が増えないこと」処理は撮影後に行うので、検出器への入射線量は一切変わらないポータブル撮影など、グリッドを正しく置きにくい場面で使われる「設定グリッド比が高いほど抑制効果が低い」は誤り。高いほど強く除去する
撮影後の画像処理なので、入射線量は一切変わらない。加算ではなく減算。

仮想グリッドは、物理的なグリッドを使わずに、画像処理で散乱線成分を推定して取り除く技術です。

出力画像=原画像−推定した散乱線画像\text{出力画像} = \text{原画像} - \text{推定した散乱線画像}

加算ではなく減算です。散乱線成分を引くからこそ、一次線成分の割合が上がってコントラストが戻ります。

物理グリッドと比べると、性格がはっきり違います。

物理グリッド仮想グリッド
しくみ鉛の箔で実際に止める画像処理で推定して引く
除去確実推定処理
線量2〜4 倍必要変わらない
位置合わせ要る(斜入でカットオフ)不要

最大の利点は、線量が増えないことです。処理は撮影後の画像に対して行うので、検出器への入射線量は一切変わりません。ポータブル撮影など、グリッドを正しく設置しにくい場面で使われます。

また、設定グリッド比を高くするほど、より強く散乱線を除去する処理になります。「高いほど抑制効果が低い」は逆で誤りです。

なお、斜入による濃度ムラ(カットオフ)は、そもそもグリッドを置かないので生じません。「仮想グリッドは濃度ムラを改善する」という選択肢は、課題そのものが存在しないので誤りです。

試験で問われやすいポイント

論点覚える形
グリッドの目的散乱線を除いてコントラストを上げる。それだけ
鮮鋭度との関係無関係(被写体より後ろにあるから)
グリッド比h÷Dh \div D(高さ ÷ すき間)
グリッド密度1÷(D+d)1 \div (D+d)。1 cm あたりの本数
選択度Tp÷TsT_p \div T_s
露出係数1÷Tt1 \div T_t(全放射線透過率の逆数)
コントラスト改善比ありの C ÷ なしの C
平行グリッド距離の制限はない
集束グリッド距離限界あり。外れるとカットオフ
静止グリッドグリッド線が写る
可動グリッド動かして線を消す
使うとコントラストは上がる
使うと粒状性は下がる
使うと被ばくは増える
管電圧を上げると選択度は小さくなる
グリッド比を上げると露出係数は大きくなる
仮想グリッド減算。線量は変わらない
仮想グリッドの設定比高いほど強く除去

まとめ

  • グリッドの目的は散乱線を除いてコントラストを上げること、ただ1つ。鮮鋭度には無関係
  • グリッド比 = h ÷ D(高さ ÷ すき間)。分母を箔の厚さ d にするのが最大のひっかけ
  • グリッド密度は 1 cm あたりの本数。mm でも重さでもない
  • 露出係数は全放射線透過率の逆数。一次線だけではない
  • 距離限界があるのは集束グリッド。平行グリッドは距離が自由
  • 使うとコントラストは上がるが、粒状性は下がり、被ばくは増える
  • 管電圧が高いほど選択度は小さくなる(散乱線が前方寄りになるから)
  • 仮想グリッドは減算。線量は変わらないのが最大の利点

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