散乱線除去グリッドは、国家試験で毎回のように出題されます。しかも評価量の式を聞く問題が多く、ここを曖昧にしていると毎回落とすことになります。
とくに グリッド比の分母は、毎回のように入れ替えられます。
グリッド比 = 箔の高さ ÷ 箔と箔の「すき間」
分母はすき間であって、箔の厚さではありません。これだけで何問か取れます。
散乱線そのものの基礎は「散乱線とその対策」にあります。この記事では、国家試験で問われる式と向きを中心に整理します。
グリッドの目的は、ただ1つ
一次線はまっすぐなのですき間を通り抜け、散乱線は斜めなので箔に当たって吸収される。
散乱線は、画像を白くかぶらせてコントラストを下げる原因です。グリッドはこれを取り除きます。
グリッドの目的は、散乱線を取り除いてコントラストを上げること。それだけ
しくみは単純です。一次線は焦点からまっすぐ来るので、深いすき間をそのまま通り抜けます。一方、散乱線は被写体の中で生まれて方向がばらばらなので、斜めに入ってきて箔に当たり、吸収されます。
ここから、グリッドが関係しないこともはっきりします。
- 鮮鋭度には関係しません。グリッドは被写体より後ろにあるので、ボケには影響しないからです
- 骨のX線透過性にも無関係です。透過性は骨自身の性質で決まります
グリッドの種類
使用距離の制限があるのは集束グリッドだけ。平行グリッドは距離が自由。
箔の向きによる分類
- 平行グリッド … 箔が互いに平行で、入射面に垂直。使用距離の制限はありません(ただし周辺部の濃度は落ちます)
- 集束グリッド(テーパグリッド)… 箔が焦点に向かって傾いていて、延長線がある距離で1点に集まります。使用距離限界があり、決められた距離から外れるとカットオフが起こります
- クロスグリッド … 2つの直線グリッドを角度をもたせて一体にしたもの。除去能は高いですが、位置合わせが厳しくなります
動かすかどうかによる分類
- 静止グリッド … X線ビームに対して動かさずに使います。グリッドの線(縞)が画像に写ります。携帯撮影などで使います
- 可動グリッド(ブッキー) … 撮影中に動かして線を消します。据え置きの撮影台で使います
評価量の式:分母が「すき間」か「箔の厚さ」か
グリッド比 = h ÷ D(高さ ÷ すき間)。分母を箔の厚さ d にするのが最大のひっかけ。
記号の意味を先に固定します。
- h … 箔の高さ
- D … 箔と箔のすき間
- d … 箔の厚さ
そのうえで、5つの評価量を整理します。
| 評価量 | 式 | 意味 |
|---|
| グリッド比 | h÷D | 箔の高さ ÷ すき間 |
| グリッド密度 | 1÷(D+d) | 1 cm あたりの箔の本数 |
| 選択度 | Tp÷Ts | 一次線透過率 ÷ 散乱線透過率 |
| 露出係数(バッキー係数) | 1÷Tt | 全放射線透過率の逆数 |
| コントラスト改善比 | ありの C ÷ なしの C | グリッドの有無でコントラストを比べる |
出題で狙われるのは、次の3点です。
① グリッド比の分母
すき間 D です。箔の厚さ d ではありません。また、高さ h が分子です。「箔の高さに対するはくの間隔の比」と、逆にした選択肢も出ます。
グリッド比が大きい = 深いトンネルなので、散乱線をよく除去できます。
② グリッド密度の単位
1 cm あたりの本数(本/cm)です。「1 mm 当たり」も「はくの重さ」も誤りです。
③ 露出係数の分母
全放射線透過率 Tt の逆数です。一次線だけの透過率ではありません。グリッドを入れると全体の透過率が下がるので、その逆数だけ露出を増やす必要がある、という意味です。
使うとどうなるか、条件を変えるとどうなるか
上がるのはコントラストだけ。粒状性は下がり、被ばくは増える。管電圧が高いほど選択度は小さくなる。
グリッドを使うと(撮影条件を一定として)
| どうなる | なぜ |
|---|
| コントラスト | 上がる | これがグリッドを使う目的 |
| 粒状性 | 下がる | 一次線も一部吸収され、量子ノイズが増える |
| 被ばく線量 | 増える | 同じ濃度を得るのに露出を増やす必要がある |
| 鮮鋭度 | 変わらない | グリッドは被写体より後ろにあるので無関係 |
上がるのはコントラストだけです。「粒状性が向上する」「被ばく線量が減少する」はどちらも誤りです。
管電圧を上げると
管電圧が高くなると、散乱線が増え、その方向も前方寄りになります。前方寄りの散乱線はグリッドをすり抜けやすいので、
選択度もコントラスト改善比も、小さくなる
「管電圧が高いほど選択度は大きい」は誤りです。向きが逆です。
グリッド比を大きくすると
深いトンネルになるので散乱線をよく除去できますが、一次線も余分に削られます。その分だけ露出を増やす必要があるので、
グリッド露出係数(バッキー係数)は大きくなる
同時に、位置合わせもシビアになります。
仮想グリッド
撮影後の画像処理なので、入射線量は一切変わらない。加算ではなく減算。
仮想グリッドは、物理的なグリッドを使わずに、画像処理で散乱線成分を推定して取り除く技術です。
出力画像=原画像−推定した散乱線画像
加算ではなく減算です。散乱線成分を引くからこそ、一次線成分の割合が上がってコントラストが戻ります。
物理グリッドと比べると、性格がはっきり違います。
| 物理グリッド | 仮想グリッド |
|---|
| しくみ | 鉛の箔で実際に止める | 画像処理で推定して引く |
| 除去 | 確実 | 推定処理 |
| 線量 | 2〜4 倍必要 | 変わらない |
| 位置合わせ | 要る(斜入でカットオフ) | 不要 |
最大の利点は、線量が増えないことです。処理は撮影後の画像に対して行うので、検出器への入射線量は一切変わりません。ポータブル撮影など、グリッドを正しく設置しにくい場面で使われます。
また、設定グリッド比を高くするほど、より強く散乱線を除去する処理になります。「高いほど抑制効果が低い」は逆で誤りです。
なお、斜入による濃度ムラ(カットオフ)は、そもそもグリッドを置かないので生じません。「仮想グリッドは濃度ムラを改善する」という選択肢は、課題そのものが存在しないので誤りです。
試験で問われやすいポイント
| 論点 | 覚える形 |
|---|
| グリッドの目的 | 散乱線を除いてコントラストを上げる。それだけ |
| 鮮鋭度との関係 | 無関係(被写体より後ろにあるから) |
| グリッド比 | h÷D(高さ ÷ すき間) |
| グリッド密度 | 1÷(D+d)。1 cm あたりの本数 |
| 選択度 | Tp÷Ts |
| 露出係数 | 1÷Tt(全放射線透過率の逆数) |
| コントラスト改善比 | ありの C ÷ なしの C |
| 平行グリッド | 距離の制限はない |
| 集束グリッド | 距離限界あり。外れるとカットオフ |
| 静止グリッド | グリッド線が写る |
| 可動グリッド | 動かして線を消す |
| 使うとコントラストは | 上がる |
| 使うと粒状性は | 下がる |
| 使うと被ばくは | 増える |
| 管電圧を上げると選択度は | 小さくなる |
| グリッド比を上げると露出係数は | 大きくなる |
| 仮想グリッド | 減算。線量は変わらない |
| 仮想グリッドの設定比 | 高いほど強く除去 |
まとめ
- グリッドの目的は散乱線を除いてコントラストを上げること、ただ1つ。鮮鋭度には無関係
- グリッド比 = h ÷ D(高さ ÷ すき間)。分母を箔の厚さ d にするのが最大のひっかけ
- グリッド密度は 1 cm あたりの本数。mm でも重さでもない
- 露出係数は全放射線透過率の逆数。一次線だけではない
- 距離限界があるのは集束グリッド。平行グリッドは距離が自由
- 使うとコントラストは上がるが、粒状性は下がり、被ばくは増える
- 管電圧が高いほど選択度は小さくなる(散乱線が前方寄りになるから)
- 仮想グリッドは減算。線量は変わらないのが最大の利点
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