デジタルX線検出器は、国家試験で毎回のように出題されます。しかも聞かれ方がはっきりしていて、CR と FPD のどちらの話か、直接変換と間接変換のどちらか、この2つの仕分けができれば大半が解けます。
誤りの選択肢の作り方も決まっていて、2つの用語を入れ替えるだけです。「間接変換方式では a-Se が用いられる」「励起光の波長は 400 nm 程度である」——どちらも、正しい記述の主語を入れ替えたものです。
この記事では、その入れ替えられやすいポイントを中心に整理します。撮影条件や画質の基礎は「撮影条件(管電圧kV・管電流時間積mAs)と画像」「一般撮影の画質」にあります。
CR と FPD:違いは「読み取り装置に運ぶ工程があるか」
CR はいったん蓄えて、あとから読み出す。FPD はその場で電気信号にする。だから FPD は撮影直後に確認できる。
CR(Computed Radiography)は、イメージングプレート(IP)にX線のエネルギーをいったん蓄えておき、読み取り装置でレーザーを当てて読み出す方式です。読み取り装置まで運ぶ工程があるので、リアルタイムには観察できません。
FPD(Flat Panel Detector)は、X線をその場で電荷に変えて、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)で読み出します。撮影直後に画像を確認でき、パルス照射で動画(透視)も撮れます。
ここから、両者の性格の違いが出てきます。
- リアルタイム観察 … CR は不可、FPD は可能
- 動画撮影 … FPD のみ
- 量子検出効率(DQE) … FPD のほうが高い
- 画像の歪 … FPD は原理的に歪がない。素子が平面に並んでいるだけだからです。歪が出るのは電子レンズを使う I. I.(イメージインテンシファイア)
- ダイナミックレンジ … どちらも増感紙-フィルム系よりはるかに広い
CR:赤いレーザーを当てて、青い光を取り出す
励起光は赤色レーザー、輝尽発光は青。波長が離れているから、フィルタで分けられる。
CR の心臓部は 輝尽性蛍光体(BaFX:Eu²⁺ など)です。X線を受けると電子が準安定な状態に捕らえられ、そこに光を当てると、たまっていたエネルギーが光として放出されます。これが輝尽発光です。
読み出しの流れはこうなります。
- イメージングプレートにX線のエネルギーを蓄える
- 赤色レーザー(波長 633〜690 nm 程度)を当てて励起する
- 青色の輝尽発光(波長 400 nm 程度)が出てくる
- 光電子増倍管で受け、log アンプを通して A/D 変換する
ここで問われるのが、2つの光の波長の関係です。
励起光と輝尽発光の波長は、離れているほどよい
理由は単純で、フィルタで分離するためです。読み出しでは、当てている強いレーザー光と、出てくる弱い発光が同時に存在します。波長が十分に離れていれば、フィルタでレーザー光を切って発光だけを取り出せます。近いと分離できず、読み取り精度が落ちます。
CR で問われる4点と、log アンプ
フェーディングは画質を下げる。消去は「強い光」で、加熱ではない。log アンプの形は対数。
① フェーディング
蓄えた情報は、時間とともに自然に失われていきます。輝尽発光量が減るので、画質は低下します。だから撮影後はできるだけ早く読み取ります。「画質が向上する」という選択肢は逆です。
② 消去は「強い可視光」
読み取ったあとの IP は、強い光を当てて消去し、繰り返し使います。加熱ではありません。加熱で消すのは TLD(熱ルミネセンス線量計)の方式です。
③ 画素サイズ
- 一般撮影用 … 100 µm 程度
- 乳房撮影用 … 50 µm 程度
乳房撮影は微小石灰化を写す必要があるので、より細かくなっています。「乳房撮影用は 100 µm 程度」は一般撮影用の値で、誤りです。
④ 両面集光方式
輝尽性蛍光体層の表と裏の両方から光を集める方式です。透明な支持体を使うことで実現しています。集光効率が上がるぶん、SN 比が改善します。
log アンプを使う理由
CR の輝尽発光の強さは、X線量に対して 10⁴ 以上の広い範囲にわたります。そのままでは桁が大きすぎるので、対数に圧縮して扱いやすくします。フィルムの濃度が露光量の対数に比例することとも対応がとれます。
グラフを選ぶ問題では、対数の形を思い出してください。入力が小さいうちは急に立ち上がり、大きくなるにつれて寝ていく形です。S字(シグモイド)は増感紙-フィルム系の特性曲線、右上がりに反る形は指数関数で、どちらも log ではありません。
FPD:直接変換は1段階、間接変換は2段階
a-Se は直接変換、シンチレータは間接変換。読み出しはどちらも TFT。
FPD には2つの方式があります。違いは X線を電荷に変えるまでの段階数です。
| 直接変換方式 | 間接変換方式 |
|---|
| 変換の順序 | X線 → 電荷(1段階) | X線 → 光 → 電荷(2段階) |
| X線変換部 | a-Se(アモルファスセレン) | シンチレータ(CsI・GOS) |
| 光電変換素子 | 不要 | ホトダイオードが必要 |
| 高電圧の印加 | 必要(数 kV) | 不要 |
| 構造 | 単純 | 段階が1つ多く複雑 |
| 温度管理 | 常時必要(a-Se) | 直接変換ほどは要らない |
| 読み出し | TFT スイッチング | TFT スイッチング |
読み出しはどちらも TFT(薄膜トランジスタ)のスイッチングです。画素にたまった電荷を、行ごとに順番に読み出していきます。ここは方式によらず共通なので、「読み出しは何か」と聞かれたら TFT と答えます。
入れ替えて出されるのは、次の4点です。
- a-Se は直接変換。「間接変換方式では a-Se が用いられる」は誤り
- シンチレータで光に変えるのは間接変換。「直接変換方式ではX線をシンチレータで光に変換する」は誤り
- 高電圧を印加するのは直接変換。a-Se 層に電界をかけて電荷を電極まで引き寄せます
- ホトダイオードを使うのは間接変換。光を電荷に変える素子が要るからです
FPD の3つの補正
オフセットは X線を当てない、ゲインは当てる。ここが入れ替えて出される。
FPD は数百万個の素子の集合体なので、1つ1つの感度に必ずばらつきがあります。そのままでは固定パターンノイズとして見えてしまうため、3つの補正をセットで行います。
| 補正 | X線は? | 何をするか |
|---|
| オフセット補正 | 当てない | 暗電流(ダークノイズ)を測って差し引く |
| ゲイン補正 | 均一なX線を当てる | 素子ごとの感度のばらつきをそろえる |
| 欠陥画素補正 | — | 使えない画素を周囲の値から補う |
出題では、「X線を当てる/当てない」が入れ替えられます。理屈で考えれば迷いません。
オフセット補正は暗電流を測るのだから、X線を当ててはいけない
また、素子ごとの感度ばらつきは必ずあるので、感度補正は方式を問わず必要です。「間接変換方式では素子間の感度補正は不要である」は誤りです。
空間分解能と雑音
FPD の空間分解能は、ほぼ画素サイズで決まります。上限はナイキスト周波数です。
fN=2×画素サイズ1
画素サイズが 150 µm(0.15 mm)なら、
2×0.151=0.31=3.3 cycles/mm
が上限になります。画素サイズは一般撮影用で 100〜200 µm、マンモグラフィ用で 50〜100 µm 程度です。「10〜20 µm」は細かすぎて誤りです。
雑音については、いちばん効くのは検出された量子(光子)の数です。量子雑音が支配的で、構造雑音は補正で減らせますし、量子化雑音(A/D 変換の丸め)はふつう小さい値です。
試験で問われやすいポイント
| 論点 | 覚える形 |
|---|
| CR の検出器 | 輝尽性蛍光体(イメージングプレート) |
| CR の励起光 | 赤色レーザー(633〜690 nm) |
| CR の輝尽発光 | 青(400 nm 程度) |
| 波長の関係 | 離れているほどよい(フィルタで分けるため) |
| フェーディング | 情報が失われ、画質は低下する |
| CR の消去 | 強い可視光(加熱は TLD) |
| CR の画素サイズ | 一般撮影 100 µm/乳房 50 µm |
| 両面集光方式 | 表裏から集光 → SN 比が改善 |
| log アンプ | 広いダイナミックレンジを対数に圧縮 |
| log の形 | 最初は急、あとは寝る(S字・指数は違う) |
| 直接変換 | a-Se・高電圧が必要・構造は単純 |
| 間接変換 | シンチレータ + ホトダイオード・2段階 |
| 読み出し | どちらも TFT スイッチング |
| オフセット補正 | X線を当てない(暗電流) |
| ゲイン補正 | 均一なX線を当てる(感度ばらつき) |
| 感度補正の要否 | 方式を問わず必要 |
| 空間分解能 | 画素サイズで決まる。fN=1÷(2×画素) |
| FPD の画素サイズ | 一般撮影 100〜200 µm/マンモ 50〜100 µm |
| 雑音に最も効く | 検出された量子の数(量子雑音) |
| 画像歪 | FPD はなし。歪むのは I. I. |
まとめ
- CR はいったん蓄えて読み出すのでリアルタイム観察ができない。FPD はその場で電気信号にする
- CR の励起光は赤、輝尽発光は青。波長が離れているからフィルタで分けられる
- フェーディングは画質を下げる。消去は強い光で、加熱ではない
- log アンプは、10⁴ 以上の広いダイナミックレンジを対数に圧縮するために使う
- 直接変換は a-Se で1段階、間接変換はシンチレータ+ホトダイオードで2段階
- 高電圧は直接変換、ホトダイオードは間接変換。読み出しはどちらも TFT
- 補正は3つ。オフセットは X線を当てない、ゲインは当てる
- 空間分解能は画素サイズで決まる。雑音にいちばん効くのは検出量子数
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