医療安全は、暗記ではなく考え方の問題です。根っこにある思想が1つあって、それを知っていれば選択肢の大半はその場で仕分けられます。
人は必ず間違える。だから個人を責めず、仕組みで防ぐ
この一文に反する選択肢は、ほぼ誤りです。「個人の注意力を高める」「ミスした人を処罰する」「気をつける」——こうした表現が出てきたら、まず疑ってください。
医療安全と医療機器の管理は、毎回のように出題されるテーマです。
医療安全の基本とスイスチーズモデル
事故は一つの原因では起きない。防護の層の穴が一直線に並んだときだけ、ミスは事故まで通り抜ける。
医療安全の考え方は、次の対比で覚えるのがいちばん速いです。
| うまくいかない考え方 | 医療安全の基本 |
|---|
| 個人の注意力に頼る | 人は必ず間違える、と考える |
| 「気をつけろ」と言う | 組織の仕組みで防ぐ |
| ミスした人を責める | ミスしても事故にならない設計にする |
そして、事故がどう起こるかを説明するのが スイスチーズモデル です。
病院には何重もの防護の層(受付での確認、撮影前の指さし呼称、装置のインターロック、記録の照合…)があります。しかし、どの層にも穴(弱点)があります。ふだんはどこかの層で止まりますが、すべての穴が一直線に並んでしまったときだけ、ミスは事故まで通り抜けます。
ここから導かれる結論が重要です。
事故は一つの原因では起きない。だから対策も一つでは足りない
「医療事故を減らすため、一つの原因のみに重点的な対策を行う」という選択肢は、この点で誤りです。
なお、WHO が定義する患者安全は「医療に関連した不必要な害を、受け入れられる最低限にまで減らすこと」です。「根絶する」ではありません。害をゼロにはできないという前提に立つのが、患者安全の考え方です。
用語の整理
分かれ目は「患者に影響が出たか」と「過失があったか」の2つ。
用語は、2つの分かれ目で整理できます。
分かれ目①:患者に影響が出たか
- インシデント(ヒヤリハット)… 患者に影響が及ばなかった、あるいは影響が軽微だった
- アクシデント(医療事故)… 患者に実際に影響が出た
分かれ目②:過失があったか
- 医療事故 … 過失の有無を問わない。患者に影響が出た事象すべて
- 医療過誤 … そのうち過失(注意義務違反)によるもの
ここで狙われるのが、「医療過誤とは医療従事者の故意によって生じた医療事故である」という選択肢です。故意なら、それは過誤ではなく犯罪です。過誤は過失によるものを指します。
安全設計の用語:起きる前か、起きた後か
起きる前か、起きた後かで2つに分けるのがいちばん速い。取り違えの定番はフォールトトレランスとフールプルーフ。
似たカタカナが5つ並びますが、エラーが起きる前の話か、起きた後の話かで分ければ迷いません。
起きる前:エラーを防ぐ
- エラーレジスタンス … そもそもエラーが起きにくい仕組みにする
- フールプルーフ … うっかりミスをしても事故にならない(扉を開けると装置が止まる、など)
- フォールトアボイダンス … 故障そのものが起きないように設計する
起きた後:被害を広げない
- フェイルセーフ … 故障したら安全側に倒れる
- フォールトトレランス … 故障が起きても機能を保ち続ける(多重化・冗長化)
後ろの2つは、故障が起きることを前提にしています。フォールトアボイダンスとは発想が逆です。
取り違えの定番は次の2つです。
- ✗ 「フォールトトレランスとは故障自体が発生しないように設計すること」→ それはフォールトアボイダンス
- ✗ 「フールプルーフとは障害が発生した際に安全側に動作するように設計すること」→ それはフェイルセーフ
インシデントレポートと事故防止
まず報告、分析はあと。報告しやすい文化をつくることが、いちばんの安全対策。
インシデントレポートの扱いは、出題される点が決まっています。
- 原因が分からなくても、まず速やかに報告する。分析はそのあとです
- 医師の承認は不要。ハードルを上げると報告が集まらなくなります
- 報告した人を処罰しない。処罰すれば報告は減ります
- 医療安全管理部門へ報告し、組織全体で共有・分析する。部署内で抱え込むのは最も避けるべき対応です
事故防止策についても、有効なものとそうでないものがはっきりしています。
| やってはいけない | なぜ |
|---|
| ヒヤリハット事例の隠匿 | 再発防止に逆行する |
| 注意力を高めるための訓練 | 気合いでは根本対策にならない |
| インシデント報告に対する処罰 | 報告が出てこなくなる |
| 性格適性検査に基づく配置転換 | 根拠が乏しい |
有効なのは、過誤を起こしにくい器具・仕組みを採用することです。人はミスをする、という前提に立った対策だけが続きます。
医療機器の品質管理
3つの試験は「いつ行うか」で見分ける。不変性試験は使用者が行う。日常点検は始業だけではない。
医療機器の品質管理には、目的の違う3つの試験があります。
| 試験 | いつ | 何を |
|---|
| 受入試験 | 新規の機器を設置したとき | 納入された装置が仕様どおりか確認する。ここで測った値が以後の基準値になる |
| 不変性試験 | 使い始めてから継続的に | 性能が変わっていないかを定期的に確認する |
| 現状試験 | すでに使っている装置に対して | いまの性能を把握する。設置前には行えない |
出題で狙われるのは次の2点です。
- 不変性試験は納入業者ではなく、使用者(施設側)が行います
- 日常点検は始業点検だけではありません。始業・使用中・終業の3つからなります
医療機器安全管理責任者は、医師に限りません。歯科医師・薬剤師・看護師・診療放射線技師・臨床工学技士などから、必要な知識と経験を持つ者を選任できます。配置を義務づけているのは医療法です(「診療放射線技師法と医療法」参照)。
チーム医療
国家資格の有無で線は引かない。目的ごとに複数のチームが並行して動く。
チーム医療の本質は、各職種が専門的な視点を持ち寄って、メンバーで総合的に意思決定することです。特定の職種が一方的に決めるものではありません。
押さえるべき点は4つあります。
- 患者情報は必要な範囲で共有する。守秘義務のもとでの共有が前提です。「共有しない」は誤り
- 国家資格の有無で線を引かない。事務職員・介護福祉士・ボランティア、そして患者本人と家族もチームの一員です
- 役割分担は平常時にこそ明確にしておく。曖昧なままだと、緊急時に対応が抜け落ちます
- 目的に応じて複数のチームが並行して動く。感染対策(ICT)・栄養サポート(NST)・緩和ケア・褥瘡対策・医療安全など、それぞれ別のチームです。「院内横断的に単一のチームを組織する」は誤り
診療放射線技師が関わる代表例は、放射線治療チーム・医療被ばく低減の取り組み・医療安全管理です。「自分の専門性をどう持ち寄るか」という視点で選択肢を読むと迷いません。
試験で問われやすいポイント
| 論点 | 覚える形 |
|---|
| 医療安全の基本 | 個人を責めず、仕組みで防ぐ |
| 事故の起こり方 | スイスチーズモデル。原因は複数 |
| WHO の患者安全 | 不必要な害を最低限まで減らす(根絶ではない) |
| インシデント | 患者に影響が及ばなかった(ヒヤリハット) |
| アクシデント | 患者に影響が出た(医療事故) |
| 医療事故 | 過失の有無を問わない |
| 医療過誤 | 過失によるもの(故意は犯罪) |
| エラーレジスタンス | エラーが起きにくい仕組み |
| フールプルーフ | うっかりミスをしても事故にならない |
| フォールトアボイダンス | 故障自体を防ぐ |
| フェイルセーフ | 故障したら安全側に倒れる |
| フォールトトレランス | 故障しても機能を保つ(多重化) |
| インシデントレポート | 原因不明でも提出・承認不要・処罰しない |
| 有効な事故防止策 | 過誤を起こしにくい器具の採用 |
| 受入試験 | 新規設置時。以後の基準値になる |
| 不変性試験 | 使用者が継続的に行う |
| 現状試験 | すでに使っている装置。設置前は不可 |
| 日常点検 | 始業・使用中・終業の3つ |
| 医療機器安全管理責任者 | 医師に限らない(技師も可)。医療法 |
| チーム医療 | メンバーで総合的に意思決定。資格で線を引かない |
まとめ
- 医療安全の基本は「人は必ず間違える。個人を責めず、仕組みで防ぐ」
- 事故は一つの原因では起きない(スイスチーズモデル)。だから対策も一つでは足りない
- インシデント/アクシデントは患者への影響で、医療事故/医療過誤は過失の有無で分かれる
- 安全設計の用語は起きる前か、起きた後かで分ける。フールプルーフとフェイルセーフの取り違えが定番
- インシデントレポートは原因不明でも提出。承認不要・処罰しない・部署内で抱え込まない
- 有効な事故防止策は過誤を起こしにくい器具の採用。注意力・処罰・配置転換は根本対策にならない
- 機器の試験はいつ行うかで見分ける。不変性試験は使用者、日常点検は3つ
- チーム医療はメンバーで総合的に意思決定。国家資格の有無で線は引かない
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